外科手術が必要なインプラント。インプラント治療をしたいけれど、「妊娠中のインプラント治療はリスクがあるのではないか」「治療中に妊娠したらどうしよう」と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
今回は、妊娠中のインプラント治療について解説します。妊娠中にインプラント治療を受けるリスクやインプラント治療に適したタイミングについても詳しく紹介しているので、妊娠中のインプラント治療にお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
妊娠中にインプラント治療は受けられるのか
妊娠中にインプラント治療を受けることはできます。実際に、安定期に入っていれば胎児に影響がないと考える歯科医師もいます。しかし、妊娠中のインプラント治療は推奨されていません。なぜなら、妊娠中はこれまでの体の状態と異なる場合が多く、些細なことでもトラブルを引き起こす恐れがあるからです。特に抜歯などの外科手術はリスクが高いため、緊急ではない限り、妊娠中は控えるケースが多いでしょう。インプラント治療でも、人工歯根を骨に埋め込む外科手術が必要です。そのため、妊娠中の方や妊娠を考えている方は、治療時期を慎重に考えましょう。
妊娠中にインプラント治療を受けるリスク
妊娠中にインプラント治療が推奨されないのは、以下のようなリスクが考えられるからです。妊娠中にインプラント治療を受ける5つのリスクを解説します。
レントゲンの放射線が胎児に影響を及ぼす危険性がある
レントゲン写真を撮ると、少なからず放射線を浴びることになります。一般的なレントゲンの被ばく量(歯科撮影)は0.002~0.01mSvといわれていて、身体に影響を及ぼす基準値200mSvを大きく下回っています。被ばくして胎児や妊婦に影響を及ぼす可能性は低いものの、リスクがないとは言い切れません。絶対に安全とはいえないため、レントゲンを撮る際は妊娠しているかどうか確認されます。
参照元:環境省「(PDF) 第1章 放射線の基礎知識と健康影響」放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(平成26年度版)
参照元:環境省(https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h28kisoshiryo/h28kiso-02-05-12.html)
仰向けの治療で腹部大動脈を圧迫する可能性がある
妊娠中にお腹が大きくなると、さまざまな臓器が圧迫されます。特に、仰向けの状態だと腹部大動脈が圧迫されてしまいます。腹部大動脈を圧迫すると妊婦や胎児に負荷をかけてしまうため、妊娠後期で長時間仰向けになるのは注意が必要です。インプラント治療の外科手術は、一般的に1本あたり15分~30分、麻酔や術後の処置にかかる時間を含めると45分~1時間半かかるといわれています。長時間仰向けになる治療は注意しなければなりません。
出血量が多いと早産を誘発する可能性がある
インプラント治療は外科手術が必要になるため、通常の歯科治療に比べて出血量が増えることがあります。通常は問題のない出血量でも、妊娠中は早産のリスクを高めるなど、胎児、妊婦ともに大きな負担になることがあるので注意が必要です。
つわりで身体に負荷がかかる
妊娠2~3ヵ月に起こるつわりは、吐き気だけでなく食欲もなくなるため、心身ともに負担がかかる時期です。つわりの時期にインプラント治療を行うと、さらに負担がかかってしまいます。また、予約をしていても、つわりがひどい場合は治療が受けられなくなるケースも。つわりの時期は治療を避けるのがよいでしょう。
薬剤による母乳汚染の可能性がある
インプラント治療を行う際は、麻酔など薬剤を用いることが多くあります。もちろん、人間の健康を害さない程度の量を使用しますが、妊婦と胎児に100%影響がないとはいえません。また、薬剤によって母乳汚染の可能性が考えられているため、妊娠中のインプラント治療はおすすめできません。
インプラント治療に適したタイミング
妊活中の方のインプラント治療に適したタイミングは、妊娠前と出産後の2つです。妊娠が発覚した際に治療が中断されても大丈夫な場合は妊娠前に、落ち着いてから治療を進めたい場合は出産後がおすすめです。とはいっても、計画通りにならないのが妊娠。もし治療中に妊娠が発覚した場合は、すぐに担当医に状況を伝えましょう。
インプラント治療よりも妊娠中の身体を優先
妊娠中のインプラント治療について解説してきました。妊娠中のインプラント治療は禁止されていませんが、レントゲンや外科手術、仰向けの状態による妊婦や胎児への悪影響は否定できません。妊活中でインプラント治療を検討中の方は、妊娠前または、出産後に行うことをおすすめします。